マレーシアのインド系は人口の7%ほどですが、クアラルンプールでは10%。その多くがヒンドゥー教徒であり、各地にヒンドゥー教諸神の神殿があります。お祭りも盛んですが、最も盛り上がるのが毎年この時期に行われるタイプーサム。KL、マレーシアのみならずインドや世界各国から訪れる信者は200万人以上と言われています。2026年のタイプーサムの様子をレポートしてみました。
タイプーサム( Thai Pusam )はどんなお祭りかな
インドの民族宗教であるヒンドゥー教は多神教であり、様々な神様が活躍します。神様が多くて困るのですが、実際は人気のある神様は10柱ほど。中でも人気が高いのは主神であるシヴァ神とその家族です。
シヴァ神の息子であるムルガン神(スカンダ神)が悪神と戦った時、母パールバティ神より槍を与えられこれを打ち破ります。これを祝うのがタイプーサムでヒンドゥー教暦の1・2月( Thai )と星( Pusam )という意味。
ムルガン神は南インドで人気が高く、南インドのタミル人系が多いマレーシア・シンガポールでは人気抜群の神様です。ヒンドゥー教の聖地バトゥ・ケーヴスにそびえる黄金の神像がムルガン神でスペード型の槍を持つのが特徴。

※ ヒンドゥー教の神々は専用の乗り物動物を持ちます。シヴァ神は白牛、ムルガン神は孔雀に乗っています。象神ガネーシャの乗っているのが何だか分かりますか? 「ネズミ」なんです。

タイプーサムはヒンドゥー教暦の Thai の月の満月に行われるのですが、2026年は 2/1 (昨年は2/11でした)でした。その2日前にチャイナタウンにあるスリ・マハ・マリアマン寺院から1台の山車(だし)が出発。これにはムルガン神の御神体が載せられ、バトゥ・ケーヴスまで行くのです。そして大勢の信者が歩いてこれに続きます。
※ この御神体を載せた車は英語だとチャリオットと書かれていますが、「戦車」とするのもおかしい。御神体を載せるという意味では「神輿」(みこし)が正しいがこれも少し変。しかたなく山車と書きましたが、トラタロウの記事だけの表現です。




頭には金属の壺
黄色は「純潔・清廉」を表すタイプーサム巡礼の服。銀の壺には捧げ物のミルクが入っています。巡礼路の要所要所(たいがいインド系の居住区)にはテントが張られ巡礼をもてなす飲食物が用意されています。テント前には「豊穣・子沢山」のシンボルであるバナナの樹が置かれます。


チャイナタウンを出発した巡礼行列が最初に通るインド人区がレブアンパン通り。お祝いバナーが張られ、テントにはもてなしの飲食物が用意されます。けたたましくインド音楽が鳴り響く非日常的な空間です。


巡礼へのもてなし品は飲料・カレーライス弁当・お菓子など。どう見ても異教徒であるトラタロウにもくれようとします。「配るだけでも功徳がある」とされているのかな? お菓子を少しいただきました。
この「おもてなしテント」はタミル語でターニール・パンタル( Thannr Panthal )と呼ばれ、直訳すると「水の小屋」で給水所ですね。


神々への捧げ物なのか、巡礼への鼓舞なのか沿道で各種パフォーマンスが披露されます。




インド人の他はわずかな観光客だけで、マレー系や華人系のマレーシア人は見ません。他民族の宗教行事を見に来ることは稀みたい。インド以外でこれだけ沢山のインド人を見ることはないな。


適当な時間でトラタロウは撤退しましたが、この行列は真夜中過ぎまで続くみたいです。
タイプーサムの前日

翌日は自転車で華人市場のあるクポンバルに行きましたが、巡礼行列が通ったである道路では、おもてなしテントの撤収作業が行われていました。
帰りはカンポンバトゥと言う街を通ります。ここは3大民族の混住地ですが、普段は華人が多め。ところが今日はふるまいテントが並び、無料の食事が提供されるリトルインディアと化しています。
でもタイプーサムの山車はすでにバトゥ・ケーヴスに着いていると思うので、巡礼が来るのかな?



イポー通り沿いにKLに帰るが、沿道にはおもてなしテントの列とインド音楽の音。そして前方から御神体を載せた山車が来るではありませんか。どうも山車は昨晩はどこかで停まって、今日の昼間にバトゥ・ケーヴスに向かうようです。



山車のすぐ後ろには高所作業車がついています。途中で山車の屋根にひっかかりそうな電線等があったら、持ち上げて山車を通すため。


行列が通過すると待機していた清掃作業員が投入されます。路上にはココナッツの殻が散乱しているのです。ココナッツを路上に投げて割砕くことで「道が清められる」とされるため。


帰りの路上に山車みたいの物を発見。近づいてみると車に山車もどきを組んだ代物です。熱心な信者が作った移動祭壇なのかな?
当日のバトゥ・ケーヴスです


バトゥ・ケーヴスに行く無料シャトルバスは3ヶ所から出ていました。KL中心部チャイナタウンのそばのLRTパサースニ駅、ゴンバッ駅、カンポンバトゥ駅。パサースニ駅以外はインド系住民が多い土地なのかな。
パサースニ駅から乗りましたが、利用者はほとんどインド人。約40分でバトゥ・ケーヴスに着きます。

バトゥ・ケーヴス正門左手のスロープから、何やら緑色の大きな造形物がやって来ました。これはカバディ( Kavadi )と呼ばれる神輿(みこし)のような物で、熱心な信者はこれを担いで参拝。ムルガン神の像や絵が据えられたそれは孔雀の羽根で飾られています。孔雀はムルガン神の乗り物にしてシンボルですので。



タイプーサムは「奇祭」と紹介されることがあります。なぜなら参拝者の一部は我が身を苦しめる「苦行」を行いながら進むからです。苦行は頬や舌に長い串を刺す、重しをつけたフックを体に刺すなどです。インドではこれがあまりにも過激になったことからタイプーサムが禁止されました。現在タイプーサムが行われるのはマレーシア、シンガポールのみとか。
2024年から「苦行」がソフト化される傾向
2023年コロナ明けのタイプーサムでは「苦行」は従来通りでしたが、翌年からはソフト化され現在もその傾向が続いています。


2023年の苦行の様子はこちら。閲覧注意
2023ヒンドゥー教の奇祭タイプーサムに行ってみた②苦行・参拝編 にいどうします

バトゥ・ケーヴスの寺院は272段の階段を上った洞窟の中にあります。階段は4列あり左から巡礼用、カバディ用、巡礼下り、カバディ下りに分けられています。


カバディの裏面にはムルガン神の絵が飾られることが多いです。青年の姿で描かれることも多い神様ですが、タイプーサムでは子供姿も人気があります。


タイプーサムで洞窟内の寺院に外国人(異教徒)が行ってはいけない、とは言われていません。でも普段ならともかくタイプーサムの日は遠慮して行ったことはありません。第一とんでもない人混みに恐れをなしてしまいますね。


2023年のタイプーサム前日に入った洞窟の内部です。スリ・スブラマニアム寺院が左手にあり、ここで神官が巡礼から供物のミルクを受け取っていました。


タイプーサムの名物?が剃髪。あちらこちらに床屋があり老若男女(女性もいます)がカミソリで剃髪してもらっています。これは祈願成就、神への感謝などを表す行為だとか。


西側に流れる川のあたりがカバディや巡礼の出発地点。ドラム楽団が随行して雰囲気を盛り上げます。幼稚園児ぐらいの男の子も自己流でドラムを叩いていました。行く末頼もしいですね。


あちらこちらに「タイプーサムおめでとう」のバナー。アンワル首相(ムスリムです)のバナーは連邦紋章がついているので政府からの物かな。インド人も政治的に無視できない勢力です。


トラタロウは昼過ぎには撤収しましたが、この日は深夜まで巡礼者でにぎわったそうです。
実はもう一幕あります
2/1 にタイプーサムは無事終了。 そして御神体を載せた山車が 2/3 の未明にKLに戻ってきます。往路には遠く及びませんが、復路も熱心な信者が付き従っていました。




これでタイプーサムは終了。来年も見に行きたいですね。
もうひとつおまけ画像


リトルインディアのひとつレブアンパン通りの近くに「山車の格納庫」を発見。歩いていたら扉が開けられていて、中に山車があるのを確認です。

コメント