スリ・マハ・アリアマン寺院はクアラルンプールの旅行ガイドブックに必ず載っているヒンドゥー教寺院です。KL最古のヒンドゥー教寺院であり、チャイナタウンに隣接しロケーションも抜群。
南インドのドラヴィダ様式の山門が特徴です。山門に飾られる神像が色あせてきたな、と思っていたら昨年より改装が始まり新装公開。ものすごくキレイになったので見に行きました。
※ 6月末には新装完了してたらしいが、7月に未明のウォーキングで通りかかって気づきます。見に行ったのは7月末ですが、その後KLでイベントが多々開催され、その記事を優先したため遅くなりました。
![関帝廟](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/079.jpg)
LRTパサールスニ駅から徒歩2分
スリ・マハ・マリアマンはどんな寺院なの
ヒンドゥー教やその神々は日本人にはなじみがないので少し解説です。
① 女神マリアマンをお祀りします
ヒンドゥー教はインド人の8割ほどが信仰する民族宗教(特定の地域・民族のみが信仰する、日本だと神道です)であり多くの神々が祀られる多神教です。
Sri Maha Mariamman の Sri は古代インドのサンスクリット語で「光り輝く」、Maha は「偉大な、大きな、すごい」を意味します。
![マリアマン](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8820.jpg)
Sri はスリランカ(光り輝く島)という国名や KL市内でも地名・駅名(LRT Sri Petaling線など)によく使われています。
Maha はマハラジャ( Maharajah、偉大な王)のマハですね。意外なのが「摩訶不思議」(まかふしぎ・すごく不思議なこと)という日本語の表現の魔訶も Maha が語源だったこと。
実はサンスクリット語(梵語)はヒンドゥー教だけでなく仏教用語(最初のお経はサンスクリットで書かれた)だったため日本語にも断片的に入っています。涅槃、断末魔、奈落などもサンスクリット語が語源だとか。
マリアマン神はどんな神様かというと
・南インドの地母神で雨や収穫をつかさどる繁栄の神
・病気(天然痘など)から守ってくれる存在
・海外在住のインド人(ヒンドゥー教徒のみでしょうが)の守護神
などの属性があるためシンガポール、ベトナム、タイなどインド人が多い各国・各地に寺院があります。
② 寺院の歴史と様式
スリ・マハ・マリアマン寺院は1873年に当時のタミル人(南インドの主要民族、マレーシア在住のインド人の多数派)のリーダーで実業家だったサミ・ピライ氏(K. Thamboosamy Pillay)のプライベート寺院として建てられました。元はKL駅近くにあったそうですが、1885年に移動し1920年代後半から一般に公開されます。現在の建物は1968年、ゴプラムは1972年の建立。
![こんな](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8817.jpg)
南インドに多いドラヴィダ様式で、これはKL市内にもいくつか見られます。ゴプラム(塔門)と呼ばれる山門があり、そこに神々や神話の登場人物の像を「これでもかぁ」というぐらい配置するのが特徴。
![2013](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/47dab23ece286c36851a12302694f7c2.jpg)
2013年の撮影
![マドゥライのミーナークシー](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/FXCD0027-768x1024.jpg)
の巨大塔門、これが12あります
マドゥライのミーナークシー寺院の塔門は最大60mもあり、すさまじい質感でした。それには及ばないがKLのそれも高さ22.9m、5層、228体の神像を配置しており、なかなかのインパクトですね。
➂ マリアマン神とムルガン神の関係は?
ヒンドゥー教のお祭りのひとつがタイプーサム( Thaipusam)です。これはKLの北方にあるヒンドゥー教の聖地バトゥ・ケーヴスで行われるムルガン神を祀る行事です。
2023年は2/5に行われましたが(ヒンドゥー教暦で行うため毎年変わる)、2/3の夜にスリ・マハ・マリアマン寺院から一台の山車(だし)が出発しました。
![バトゥ・ケーヴス](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_3281.jpg)
※ わが身に苦行を課す奇祭タイプーサムの様子はこちらです
2023ヒンドゥー教の奇祭タイプーサムに行ってみた②苦行・参拝編 に移動します
![銀](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_5208.jpg)
後ろに数万人の信者が続く
山車は高さ6.5mもあり350Kgの銀が装飾に使われている豪華な物。ムルガン神の像が乗せられバトゥ・ケーヴスに運ばれ、祭礼終了後スリ・マハ・マリアマン寺院に戻ります。ここで疑問、ムルガン神は像の頭を持つガネーシャ神と同じく、主神シヴァと妃パールバティ神の息子です。そのムルガン神とマリアマン神はどんな関係なの?
調べてみると…
2柱の神は母子関係でした。マリアマン神はシヴァ神の妃であるパールバティ神の化身とみなされていました。ヒンドゥー教は神様が多くて大変なのですが、事態をさらに複雑化させるのが化身(他の形で出現する)という思想です。
パールバティ神は優し気な女神様なのですが、悪鬼のような姿(カーリー神)や武装して虎に乗る(ドゥルガー神)など全然違う化身で現れることがあります。南インド土着の神マリアマンもその化身のひとつですが、ヒンドゥー教が南に進出した時に現地の神を取り込んで勢力下におさめたという事情が背景にありそうですね。
母子関係なら母神の寺院から出発して戻るというのも納得。
※ ご神体がスリ・マハ・マリアマン寺院に帰還する様子はこちら
2023ヒンドゥー教の奇祭タイプーサムに行ってみた➂ご神体帰還編 に移動します
![シヴァファミリー像](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_9673.jpg)
ヒンドゥー教の神々の絵・像は神様ごとの約束事(姿かたち、持ち物等)があり、それを知っていると特定できます。左端からガネーシャ神、シヴァ神、パールバティ神、ムルガン神ですが、それぞれの約束事をあげてみます。※すべての約束事が使われるとはかぎりません。この像で使われていない約束事には×をつけます。
ガネーシャ神…象の頭、こんな神様他にはいません。ネズミが乗り物×。
シヴァ神…青い肌×、頭頂より水(ガンジスを象徴)、コブラを巻く、三又槍、白牛×、背景にヒマラヤ、シヴァ・リンガ×。
パールバティ神…緑の肌で表現されることもある、睡蓮を持つ。
ムルガン神…スペード型の槍を持つ、孔雀が乗り物。
Before・After の画像を比較です
![塔門1](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/2c739e7c44b41328788ee48eef464eec.jpg)
![塔門2](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/04212345ac0e652fe38bb3a70e80d0ff.jpg)
新装公開されたスリ・マハ・マリアマン寺院ですが改装前の画像と比べてみました。完全に同じ角度ではありませんが、十分違いは分かります。
![塔門3](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/a4376e99fb3d5b636e08cf29a311a694.jpg)
![塔門4](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/a9321fd0595433605b5a5011211ec3ba.jpg)
![塔門5](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/f98618596759f99ee0f74f644a75beaf.jpg)
![塔門6](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/5dabdd4407c3f5061081a6548ce8895d.jpg)
![騎馬像1](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/19ab22597e968c43f44a7cc964c1adec.jpg)
![騎馬像2](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/3572346914c7492c912d102d3178e642.jpg)
![建物1](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/ed12b338889d43313b15948c9f0943e9.jpg)
![建物2](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/cde25a719af561f06ebf032f32b223a0.jpg)
![建物3](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/b8d25c0c97be31ecfbbdd0b7fbc4ed2e.jpg)
塔門・神像は破損を修理して塗りなおしただけですが、左右の建物の正面は完全に様変わり。シンプルな窓枠状だったのが内側に枠を増やして立体的になりました。
今まで無きに等しかった色彩もテンコ盛り。改修ではなく新築に近いですね。
![祭壇1](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/c27ab5504a9462cf7e1c62ea8729d42e.jpg)
![祭壇2](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/bc1f5cea57d287381ead7177a101dd88.jpg)
枯淡(こたん・あっさりとした風情)の境地も佳しとする日本人の感覚では、前の寺院の様子も趣(おもむき)がありました。でもインド人的にはこのゴージャスなキンキラ・ハデハデ感が良いみたい。神々もきらびやかな方がありがたみが増す?
あらためて内外を見てみます
![オレンジ](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8802.jpg)
![輝いて](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8794-768x1024.jpg)
![立体化](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8796.jpg)
![上部](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8813.jpg)
![神像](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8805.jpg)
![細かい](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8810.jpg)
![ガネーシャ神](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8806.jpg)
![ムルガン神](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8809.jpg)
![かべ](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8825.jpg)
![本殿内部](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8844.jpg)
![神官](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8854.jpg)
![ムルデカ118](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8838.jpg)
![未明](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/P1110654.jpg)
![デーパバリ](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_8793-678x1024.jpg)
正直言ってスリ・マハ・マリアマン寺院は歴史はあるが地味な存在と思っていました。今回のリニューアルでその存在感は3倍増という感じです。
インドはもとよりマレーシアでも売られているヒンドゥー教諸神の絵は豪華な色彩ですが、スリ・マハ・アリアマン寺院はその立体化された姿ですね。
![極彩色](https://www.logrecodocu.website/wp-content/uploads/2023/09/IMG_5460.jpg)
すでに行かれたことのある方にも再見を強くオススメします。
前とは別物です!
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