マレー半島東海岸部に行ってきました。コタバルとクアンタンには以前行きましたが1泊レベルの短期滞在。今回はもう少し長く滞在してみます。北からコタバル、クアラ・トレンガヌ、クアンタンなどの都市を廻りましたが、同じマレーシアでもクアラルンプールとは違う点が色々ありましたので比べてみました。
KLと東海岸都市の基本人口データです
クアラルンプールは意外に狭く東京23区の4割ほどの面積しかありません。人口も208万人と札幌には勝つけど名古屋には負ける程度。でも都市圏で見ると人口900万人に迫ろうとする巨大都市圏を構成しています。ここにはマレーシア人の四分の一が住みクラン・バレーと呼ばれています。
これに対し東海岸部はクアンタン州(人口193万人)・州都コタバル都市圏(49万人)、トレンガヌ州(人口128万人)・州都クアラ・トレンガヌ都市圏(41万人)、パハン州(人口168万人)・州都クアンタン都市圏(60万人)。

KLと東岸部都市は人口規模では比べる必要も無いほど隔絶しています。でもその中身を見ると様々な違いが見えてきました。
いろいろ比較してみた
① 民族構成
マレーシアは多民族国家ですがマレー系、華人系、インド系が三大民族です。マレーシア全体ではそれぞれ70%、23%、7%という割合。
ただ華人系、インド系はサービス業の割合が多く、経済をかなり握っているため都市部に多いのが特徴。KL市内では 48%、42%、10%とマレー系と華人系の人口差はあまり大きくありません。
各民族は宗教・食生活・習慣などが違うため民族ごとに固まって住む傾向にあり、マレー系しかいない、華人しか見ない、という場所もあるのです。

ではマレー半島東海岸3州の民族構成はどうでしょうか。※マレー系、華人系、インド系の順
クランタン州 94.5%、2.3%、0.2%
トレンガヌ州 96%、2.5%、0.2%
パハン州 81%、14.7%、3.7%
クランタン州・トレンガヌ州は圧倒的にマレー系が多数。パハン州はそこまではいきませんが全国平均よりはマレー系が多いのが分かります。このマレー系の多さがKLとの違いを生みだします。
※ 統計のマレー系の中には先住民(オラン・アスリ)が含まれる場合があります。マレー系と先住民族を合わせてブミプトラ( Bumiputera )と呼び「土地の子」という意味。1971年にブミプトラ政策が始まりマレー系・先住民系は公務員採用・国立大学入学などで優遇措置を受けるようになりました。これは経済力で勝る華人系・インド系への対抗政策ですが、当然華人系・インド系は不満を感じマレーシアがまとまりにくい要因のひとつになっています。

② ムスリム(イスラム教徒)が多い
先住民の中にはクリスチャンも多い(特にサラワク州)のですが、マレー系は100%ムスリム。憲法にもマレー系とは「イスラム教を信仰している者」という定義が書かれているようです。
KLもあちらこちらにモスク(礼拝所)がありますが東海岸部は人口に比べてモスクが多い感じ。周辺の町にも観光資源になりそうなほど立派なモスクがあって驚き。信仰心ことさら強き土地柄ですね。
KLのモスクのなかには一見モスクに見えないような斬新なデザインの物もありますが、東海岸部のモスクは丸いドーム屋根にミナレット(尖塔)という古典的な物がほとんどでした。


この画像だけでこれがモスクと
分かる人はいないのでは?
※ モスクのミナレットの数は国によってはモスクの格式を表します。トップ画像のモスクはミナレットが5本もあり、トルコだったら世界遺産級の有名モスク。マレーシアのイスラム教にはそういう規定が無いようでミナレットは建て放題みたい。
ちなみにコタバルでよく見かけた門のデザインがこれ。何かが左右に広がっている感じですが、実はコーラン(クルアーン)が開かれている状態なのです。聖地メッカ(マッカ)に入る道路にもこんなデザインの門があります。


③ 金曜礼拝時間にモールが閉まる
ムスリムは礼拝の義務がありますが、金曜日午後の礼拝が一番重要。KL市内でもこの時間はモスクに集まるムスリムの姿が見られ、郊外のモスクだと路上駐車だらけになります。
クアラ・トレンガヌ市内を散策していまして、昼頃にモールに入って一休みしようと思いました。スマホで位置を確認したら12:30~14:30まで閉店という表示が出て??? とりあえず行ってみます。


12:20にモールに入りましたが10分後に全店舗のシャッターが下ろされ閉店です。昼食時のかき入れ時なのに飲食店も閉店。なんなのこれ? でもこの日が金曜日なので理由は「金曜礼拝のため」と推測できます。


調べてみたらやはり金曜礼拝のための閉店でした。非ムスリムが半分を占めるKLではこんな状況は見たことがありませんが、マレーシアでもクランタン州とトレンガヌ州だけの習慣みたいです。
街中でもスーパーなどは営業していますが、飲食店などは閉店している所も多い感じ。さすがムスリムの多い州、金曜礼拝大事。
※ KLでも公官庁の金曜日のお昼休みは長めに設定されています。用事のある方は意識しておきましょう。
④ 超猫天国でした
イスラム教では「犬は不浄な生き物」とされるため犬を飼うムスリムはまずいません。そのためペットの代表が猫で文字通り「猫かわいがり」状態。
猫天国マレーシア①KLの猫たちを見てみた などでKLの猫状況をお伝えしてきましたが、東海岸部はそれを上回る超猫天国みたい。
猫も人を恐れず、なでさせてくれる子が多いです。もし猫に生まれ変わることになったらマレーシア、特に東海岸部に生まれましょう。

華人・インド人は犬が好きなので犬ゼロではありません。でも東海岸部3州滞在10日で1回しか犬を見ませんでした。猫は見ない日がありません。


⑤ 英語が通じにくくなる
日本人がマレーシアを移住先に選ぶ理由のひとつが「英語が通じる」という事でしょう。国語はマレー語ですが三大民族の共通語として英語が一番通じやすい感じ。
特にKL市内では労働人口の1割を占める外国人労働者も多いためか英語でほぼすべてのコミュニケーションが可能。おかげでマレー語はあまり覚えないのがマレーシア生活のあるあるです。
屋台などの買い物で金額を英語で言ってくれるだけで助かりますね。マレー語は1~10くらいまでしか覚えていないので。

KLでもダトゥクラマッなどほぼマレー系しか住まない地域では英語が通じない場合もありますが、東海岸部3州ではそんな場所が多かった。買い物でマレー語の数字を言われ、「イングリッシュ」と言うと英語できそうな人に聞いて答えてくれるという状況が何回もありました。
※ KLローカル探訪➂ダトゥクラマッ駅周辺に行ってみた に移動します。


KLでは見かけた記憶が無いのが店の名や表示がアラビア文字で書いてあること。ジャウィ文字というマレー語を表記するための独特のアラビア文字のようです。ムスリムはコーランをアラビア語のまま読まなくてはいけないので、マレー系はある程度アラビア文字が読めるはずですがどう違うのかな。
※ ムスリムはコーランをアラビア語で読みます。ではムスリム同士はアラビア語で会話ができて共通語になるのか? と思いましたが現実には難しいようです。なにしろコーランのアラビア語は1400年前の古語なので単語はともかくも、会話に使うには難しいとマレーシア人ムスリムに聞きました。日本人と中国人は会話できませんが、漢字を書いて簡単な筆談ができるようなものかな。
⑥ 手食率が高い
手食(てしょく)とは食事にスプーンやフォークなどのカテラリーを使わず手で食べることで、世界の4割ほどの地域はこれです。マレーシアも手食文化圏ですがKLでは地域や店によって違う感じ。マレー料理店でもオシャレな店とローカル店では手食率が違いますし、年代でも違う様子。感じとしては半々くらいかな。
でも東海岸部3州では手食率が明らかに高かかった。若い世代もほとんど手食の様子です。悪く言えば保守的、良く言えば伝統を守る土地柄なのでしょう。


麺類・スープではさすがにカテラリーを使っていました。またインド系に多いヒンドゥー教徒は「他者のけがれ」が移るのを嫌うため地域・世代にかかわらず手食が基本です。誰が使ったかわからないカテラリーよりも自分の手で食べるのが安全と考えています。
⑦ 郷土料理を食べてみた
東海岸部の名物料理はバタフライピーの花を入れて炊いた青いご飯ナシクラブ( Nasi Kerabu )。魚のすり身を筒状に丸めて揚げたクロポ・レコー( Keropok Lekor )。米粉にパンダンを入れて型で焼いたお菓子アコッ( Akok )といったところ。
でもこれらはすべてKLの屋台や夜市でも買えます。さすが全国から人があつまる大都市なので、すべての郷土料理が食べられる感じです。まあ東京でも日本全国の郷土料理が食べられるとは思いますが。

ちなみにナシケラブは自分でも炊けます。色だけで味や香りは特にありません。
道端のバタフライピーでナシケラブを炊いてみた に移動します。



魚カレーでご飯をいただくナシダガン( Nasi Dagang )、ギーを入れて炊いたご飯を牛肉煮などでいただくナシミニャ( Nashi Minak )は東海岸部で朝食に好まれご飯物。
これらはKLでは見たことがありませんでしたが、トラタロウが知らないだけで調べたら提供する店は複数ありました。東海岸部出身者が行って故郷の味を懐かしむのかな。
⑧ 華人・インド人も頑張っています
KLでは華人系は人口も多く、経済力は一番高い民族。民族別の平均月間世帯収入というマレーシア統計局の資料を見ると11.494リンギッ( 45万9760円 )とマレー系の8.220リンギッ( 32万8800円 )を上回ります。
ただ東海岸部では数がごく少ないので目立ちません。都市部に集中して住んでいるのでチャイナタウンはあったりします。
インド系も9.841リンギッ( 39万3640円)とやはりマレー系より上です。でもクアンタン州・トレンガヌ州では数が少なすぎて見ませんでした。パハン州は3.7%いるのでクアンタンにはヒンドゥー教寺院もあったりします。

コタバルの北はすぐにタイ国境なのでタイ族も少し住んでいます。北の郊外に出かけてみるとなかなか立派なタイ式仏教寺院が建立されていました。


クアラ・トレンガヌではチャイナタウンで中秋節の行事を行っていました。マレーシア華人伝統のライオンダンスも出現。自分たちの文化を守ろうとしています。


東海岸部3州ではKLでは見かけぬ風景を発見。人口が多いので料理店・屋台もマレー系が多いのですが、そこで華人やインド人も食事をしていたのです。
KLの華人は中華料理系に一番行くでしょうが食物のタブーはほぼ無いので、インド料理店、ナシカンダー(ムスリム系インド料理)、ニョニャ料理店(中華・マレーの混合)などにも行きます。ところがマレー系の飲食店では見たことがありません。華人系とマレー系は住む場所が違うので近くに店が無い、中華料理が一番だと思っている、マレー系への反発がある、など様々な理由の結果でしょうか。
インド系はヒンドゥー教徒が多くヴェジタリアンが多い、牛肉はダメ、非ヒンドゥー教徒が作った料理を嫌がる(けがれが移るので)などの理由でインド系料理店にしか行かないのがKLでは普通。
でも東海岸部3州では華人系・インド系がマレー系料理店(牛肉は無しの店)にいる風景を何度か見かけました。華人が少なかった昔は、マレー系との婚姻も行われ両者の文化が混合したプラナカン文化ができました。東海岸部3州ではマレー系社会と寄り添って生きるプラナカン文化の伝統が残るのかな。
※ マレー系も中華料理店には行きません。だって豚肉を使うもの。インド料理店もあまり行かない感じ。だってイスラム教とヒンドゥー教は教義的に仲が悪いもの。
⑨ 都市中心部が空洞化している
巨大都市クアラルンプールですが、まだ中心部に土地の余裕があるようで高層マンションの建設が続いています。郊外にモールもありますが中心部の商業地も栄えています。
ところがコタバルやクアラ・トレンガヌに行くと都市の中心部は閉店した店舗も多く、車の通行量も少なく、空洞化している感じ。一方郊外にはイオンやモールが作られ商業の中心はそちらに移行している感じでした。
車社会になると古い都市の中心部は車で行くには不便になります。郊外に大規模な駐車場を備えたモールが作られ商業の中心が移動してしまいますね。

※ 数年前にトラタロウが高校卒業までいた九州を自転車で一周しました。大分県の鶴崎という町の高校に行っていたのですが、四十数年ぶりに訪れて愕然としました。当時は小さなデパートもあって商店・飲食店でにぎわっていた町の中心部に店舗はゼロ。商業の中心は広い駐車場を備えた郊外に完全に移行していたのです。
行けるかな自転車旅行・九州一周④大分編 に移動します。


東海岸部3州の中でパハン州の州都クアンタンは中心部にも活気がありました。先見の明があったのか中心部も道路が広く車で乗り入れしやすいのです。その代わり歩行者に対する配慮は限りなくゼロ。信号無い、歩道橋無い、横断歩道無い(あってもマレーシアのドライバーは停まってくれませんが)の状態で道路を横断するのが大変!
⑩ 市内交通網
KLの中心部が空洞化していない理由のひとつが縦横無尽に張り巡らされた交通網のおかげ。MRT・LRT・モノレールなどの市内鉄道とバスを使えば都市内移動は渋滞のある車より便利。Grab などの配車アプリもあればさらに完璧。トラタロウは車を持っていませんが、KL中心部に住んでいれば全然困りません。
でもKLとジョホールバル以外の都市では公共交通機関はバスしかありません。そのバスも以前はかなりオンボロでしたが、近年州都レベルではきれいなピンク色のバスが導入されてマシになっていました。



十数年前にアロースターで市内バスに乗ったらエアコンは無くて窓全開、シートはボロボロ、床は木張り、というクラッシックバスで驚愕。これはこれで風情がありましたが、今はピンクバスになっちゃったかな。
⑪ 物価はどうかな?
多くの国で地方都市より首都は物価が高いです。KLに暮らすトラタロウは今回の旅ではさぞ物価が安いだろうと期待していました。でも結果は微妙な感じ。
賃貸料金などは安いと思いますが、ホテル代はそんなに安くありませんでした。以前はオンボロだけど格安ホテルがありましたが、ブッキングコムやアゴダで予約できるレベルのホテルは1泊税込み100リンギッ(¥4000)近くする所が多かったのです。今回最安値は1泊52リンギッ(¥2080)、最高値は114リンギッ(¥4560)。外国人は1泊10リンギッの外国人宿泊税が加算されるのも地味に痛い。
スーパーなどの食料品などもそんなに安い感じはしません。KLも高めの高級スーパーと安めの庶民スーパーに分かれますが、地方でも庶民スーパーぐらいの価格かな。コタバルだとセランゴール州やジョホール州の貿易港から遠いので、輸入品などは輸送費で割高になりがちだとか。
明らかに安かったのが屋台の食事。KLだと普通盛りでも10リンギッを切るのは稀ですが、東海岸部3州だとほぼ10リンギッ以下でした。


⑫ 東海岸部3州にクマがいなかった

マレーシアには世界最小の熊であるマレー熊が生息していますが、ここではそれをキャラクターにしたウィラ(勇者・英雄)とマンジャ(甘えん坊)のことです。 Visit Malaysia 2026 という外国人旅行者誘致キャンペーンのキャラでKLではいたる所で目にします。
ところが東海岸部3州ではゼロ。ここはマレーシア人観光客には人気のようですが、外国人は夏季に美しい島やビーチに来るぐらい。連邦政府も州政府も「お金かけても割に合わない」と判断したのかゼロでした。


マレーシア東海岸部には世界的に有名な観光地や世界遺産はありませんが、なかなか素朴で街歩きには良い所。道路も整備されていますのでKLからは車やバスで簡単にアクセスでき、短期の旅行にはオススメ。
この旅行体験を『マレー半島東海岸部に行ってみた』としてレポートしていく予定です。

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